忘れなそ、ふるさとの山河 〜郷土史編〜

地方の精神と国のかたち、都市は地方の接ぎ木である。

“豊後のロレンス”のブログを訪問頂きありがとうございます。 望郷の念止み難く、豊後及び佐伯地方の郷土史研究と銘打って日々の想いを綴っております。たまには別館ブログ(リンク先)でcoffee breakしてみて下さい。読者になって頂ければ励みになります。

老いと習慣

 昨年の帰省に伴い中断していた早朝ウォーキングを半年振りに再開した。継続する準備をして帰省したもののサボってしまっていた。なにしろその代わりに田舎では山野河海を駆け巡ったのだから。再開初日の靴擦れはやむ無しとしても二日後に尋常ならぬ筋肉痛が襲って来てその後の二日間、半泣き状態となった。歳を取ると筋肉痛は遅れてやって来るものだから仕方がない。

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 ところがどうも歳は関係なく運動の筋肉負荷によるらしい。筋肉痛には二つの種類があってこの痛みは遅発性筋肉痛という。筋肉が引き伸ばされたことで筋繊維が負傷して起こる。乳酸菌の蓄積による痛みとは無関係である。運動負荷が低い場合、筋肉のダメージ蓄積よりその修復の方が早い。要はその調整バランスによるもので痛みは遅くやってくるというのだ。ウォーキングなんてものは筋肉が弱くゆっくり動くから痛みが遅くやって来て当たり前なのだ。はからずも己の運動の質の弱点を突きつけられてしまった。

 ともかく、半年振りにお定まりの近くの遊歩道に出た。すっかり花の散った桜木の下の生垣はまるで花かと見紛う程に赤褐色を帯びていた。新芽は紫外線に弱い。だからこの色に染めてその大敵から身を守る。この歳になると肌の衰えが進む。老人斑やしみをよしとしない気持ちも心の底に未だあって、妻が意図的に目に触れるように洗面所に置いている男性用日焼け止めクリームやらメラニン除去溶液やらエイジローションやらについ手を染めている自分がいるのだ。生垣の新芽はその内、羨ましいばかりの艶々とした肌に転じるがこちらはそうはいかない。

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 この時期、いつもの見事な雪柳は既に散ってしまっていたが若葉が芽吹き始めた欅が朝日を両手で遮るように「随分とサボったものだ」と間違いなく言っていた。

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 大体、平日のこんな早朝にジョギングやウォーキングをやっている人は少ない。まず、若者はいない。同類ばかりだが流石に人数は少ない。犬を散歩させている人も一定の勢力を持つ。その役を負っているのは大抵が男性で、妻達は未だ夢心地か朝食準備を言い訳にして押し付けているのだ。かつて自分もそうだった。どの顔も一様に精彩に乏しい。

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 都会では動物愛護がとにかく過剰でカルガモも道を容易には譲らない。「どかぬと煮て食うぞ」、こちらは帰省中は鹿肉を刺身にして食ったばかりなのだ。都会に巣食う幸いを思うことだ。田舎では動物愛護の精神では生活もままならなくなる。

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 渡鳥ではない筈だが、途上にある池の木々には冬場は白鷺達が斑模様に首をすくめて寝入っていたが何処に行ったやら今は全く消えてしまっていた。白鷺は冬ならではの光景ではあるにしても。

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 沿道には竹林も多い。誰かが間引きしないと、とてつもない生命力を持つ竹は周囲の厄介物になる。この竹林はよく整備されている。筍の季節だ。住まいの敷地内に群生する竹林は住民達に毎年、旬の筍を無償で進呈してくれる。我が家でもここ数日は筍料理が食卓を飾っている。それよりなによりその生命力をいただけぬものか。

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 半年振りにも関わらず、案の定、出会うメンバーは概ね同じだった。同じ時間帯に陣取ったように同じ位置に現れた。トボトボ、トコトコ、ヨッコラヨッコラ、サッササッサ、そういう音が見える。偶にスピードランナーが抜けていく。この光景には残酷だ。

 メンバー達は、と言っても声を掛け合うような親密な間柄ではないが、この半年間、飽く事なくこれを繰り返して来たのだ。ひたすら同じ事を繰り返す。老いとはそういう一面を生活の中に合わせ持つ。

 「なんだ、こいつは未だくたばっていなかったのか」と皆に言われているようで苦笑せずにはおれなかった。小さな世界で老いを競っている。習慣を破ると仲間はずれにされるのだ。

 その二日後に反省を促すように猛烈な筋肉痛が襲って来た。

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