題名は、およそ40年前に父が私の結婚記念に贈ってくれた絵画の裏面に筆で認めていたメッセージそのものです。脱稿直前に、妻が思い出したようにこの言葉を告げてくれたのも何かの巡り合わせで、書き綴った内容が、父のメッセージへのまさに返信にも思えてきて、急遽、この題名に変更した経緯があります。偶然とは言え感慨も一入です。
日本の末端の僻地に生を受け生涯をその地に捧げ、人々に惜しまれながら逝った父について、一族のそしてともに生きた人々の記憶に暫し留めておくべきだろうと考え、筆を執った次第です。
換言すれば、長子として父との対話を最後まで忌避し続けてきたことに対する、父へのせめてもの贖罪になればと考えた為でもあります。このことは、世の中のいずこの親子間にも普遍的に所在する関係性ではありますが、やはり、悔恨の念断ちがたく、せめて思いを筆に込めて自分なりに総括することとしたものです。
元々自費出版すべく出版社に持ち込んだものですが、商用出版を推奨されるに及び、ついつい口車に乗ってしまった点は反省するところであります。一方、底流に地方の精神というものを据え、日本が喪いつつあるその価値についても訴求させて頂いたことが、商用出版への基準をクリアするに至ったのではなかったかと想像せぬでもありません。
退職後の人生の余す時間にて新たな書を練るべく、皆様にご一読頂き、ご批評を賜りますればこれほどの幸いはありません。
柴田 耕二(著者)